shojiの伝統産業を巡る旅

名古屋の学生、shojiが各地の伝統産業を徘徊してます。

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宮古上布

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宮古島の伝統工芸品、「宮古上布」は日本を代表する上布の一つです。上布とは細い糸を用いた上等の麻織物のことです。宮古上布は経済産業省指定の「伝統的工芸品」と、国指定の「重要無形文化財」の二つの性格を持ちます。
宮古上布の糸の原料は苧麻(ちょま)で、地元では「ブー」と呼んでいます。宮古上布と名乗るものには原則「手績み(機械紡績でない)」の糸でなければならず、この苧糸績みの技術も国から「選定技術保存」に選定され支援を受けています。しかし糸を績む技術者の高齢化、低賃金のうえ時間がかかる作業のため若手も仕事に従事できないという問題は依然として変わらず今後とも大きな課題となります。

重要無形文化財宮古上布の指定条件は以下の通り。
①すべて苧麻を手紡ぎした糸を使用すること。
②絣模様をつける場合は、伝統的な手ゆいによる技法又は手くくりによること。
③染料は純正植物染であること
④手織りであること
⑤洗濯(仕上げ加工)の場合は、木槌による手打を行い使用する糊は天然の材料を用いて調整すること。

以上をふまえて、宮古上布がどんなものか見ていきましょう。
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宮古上布の特徴的はなんといってもこの「十字絣」です。経糸、緯糸に細かな絣(糸を染め分ける技法)を施し、図案通り十字に交差させて藍と白地の中にハーフトーンを作っています。

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先ほどの細かな十字絣を遠目でみると、この通り繊細な柄が浮かび上がります。
藍は蓼藍と琉球藍を配合したものを用います。この細かな絣をずれないように織っていくだけでも非常に手間のかかるものなのですが、糸づくりも大変手間がかかっています。

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糸の原料は「苧麻」。収穫は4月~10月に行われ、およそ根付けから35~40日ほどで収穫できます。5~6月頃に収穫できる「ウリズンブー」(ブーとは苧麻のこと)が最上級とされます。また、一般的に夏の苧麻は生育がよく、台風が来ない限り節の少ない上質な繊維が獲られます。

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芭蕉布なんかでは一度収穫した皮を木灰で煮出してから繊維を獲るため、収穫後日をまたいでも構わないのですが、苧麻は茎から剥ぎ取った表皮を生のまま繊維を取り出すため、うまく剥げるよう水に浸し出来るだけ乾燥は避けねばならず収穫したその日に苧麻引き(ブービキ・ミミガイの縁を使って不純物を削り取る作業)をする必要があるとのこと。

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績んだ糸を受ける容器

そして繊維だけを残した表皮を爪を使って細く裂き、撚り合わせていきます。この作業を苧麻績み(ブーンミ)といいます。この苧麻績みの技術がなければ宮古上布に使う苧麻糸は完成せず、そしてこの技術の保存が危ぶまれています。この作業は非常に時間がかかる上、大した稼ぎにもならないため従事者は必然的に余暇時間が多い人に限られてしまいます。「苧麻績み保存会」では苧麻績みの講習会を開き、技術者の養成を図ってきましたが、受講生は数多くいたのですが常に苧麻績みに従事出来る人は少なく、成熟した技術を持った人たちの高齢化によって満足のいく糸が作れなくなってきている現状もあり、今後とも大きな課題となっています。

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出来上がった糸を、絵図に沿って絣部分を糸で括っていきます。かつては一つ一つ糸で括って大変気の遠くなる作業を行っていましたが、今は細かい十字絣はもっぱら「締め機」と呼ばれる器具を用いた絣締めによるものです。
幅の広い通常の絣については写真のようにビニールテープなど政経用いて手括りで行います。

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藍で染色した糸を整え、織り機にセットしたらいよいよ織の始まりです。
経糸、緯糸の細かな絣がずれないように慎重に糸をずらしながら織り進んでいきます。熟練の人でも、1日に20~30センチ程しかすすまず、絶えず絣がずれないように気を配り、15センチ程織ったら絣のズレを針でたぐって直すを延々と繰り返していきます。苧麻の糸は乾燥に弱く、大変切れやすいので細心の注意を払いますが、やはり切れてしまうことがあり、それを直すのも一苦労。糸は絣がすべて繋がっているので切れてしまうと新しい糸を継ぎ足さなくてはなりません。織るのはだいたい半年がかりの作業で、早い人で3~4ヶ月、初めての人では1年近くかかると言われています。

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やっと織り終わってもまだまだ工程は続きます。
出来上がった布は点検、洗浄、糊付けのあと「砧打ち」職人に渡ります。

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砧打ちとは、布を木槌で叩いていく作業です。4キロ程ある木槌で満遍なく布を打ち、滑らかな光沢を出していきます。宮古上布の光沢は砧打ちによって生まれます。一反仕上げるのに10時間以上、約2万回木槌を打ちつけていきます。
youtubeに動画が上がっていたので借用させていただきました。

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このテカリはのり付け後の砧打ちによって生まれます。
こうして多くの職人の手によって一反の宮古上布が出来上がるのです。苧麻績み、絵図、絣、染色、織、洗濯・砧打ち、検査・・・それぞれが分業で行われています。

最盛期には1万反以上織られていた宮古上布も近年の年間生産量は20数反ほど。この生産量でこれだけの分業制なのですから、産業としてみれば脆弱なもの。しかし、これほど成熟した織物を絶やすわけにはいきません。宮古上布が宮古島にあり続けること、人の手から生み出され続けることはなんとしてもしがみつかなくては、無くなってしまえばそこで同じものを作ることは不可能なのですから。

宮古上布の一反の値段は百数十万~二百万円以上。値段だけみればなぜこんなにも高いのか?と思われるかもしれませんが、これだけ多くの人の手と時間が必要で、さらに問屋を通すともなれば仕方の無い値段と言えるでしょう。この値段から何割かは問屋に渡り、そこから一人一人に分配して、掛かった時間で割っていくと・・・とても生計を立てられる仕事とは言えません。国からの補助がなければ産業も回らないことでしょう。

ビジネスとしてみればこんなにも非効率的で収益性の低い産業が続いていること自体奇跡といえます。しかもそれでも人が集まってきている。絶やすわけにはいかないというモーメントが働いている。伝統産業が地元に残り続けているのは何故か。人が団結するのは何故か。そこには定量化されていないが確かな力が存在しているように思えます。一般的な産業と同じ考えではどんな施策も空回りになってしまうことでしょう。伝統産業が力を入れなければいけないところは小手先なビジネス論ではない、人と人の繋がりという原点なのではないか。

宮古上布は晴れ着ではありません。夏の普段着として上納されてきたものです。200万円の普段着は時代の風潮の対局にいながらも、存在し続けているという確かなメッセージを発信しているように思いました。
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[ 2011/04/06 23:00 ] 宮古上布 | TB(0) | CM(2)
宮古上布の詳しいレポートありがとうございました。
ドキドキしながら拝読しました。
気が遠くなる程の工程を経て仕上がっているのですね。
それにお金をだして購入するのもおこがましいですが・・。

それでも作る方がいて 買う者がいて 身に着けて
初めて宮古上布の役目が果たされるのですから
私も仕事をがんばって 「いつかはクラウン」(?古い?)ならぬ
いつかは「宮古上布」 を実現させたいと強く思いました。

14日からの旅行は本島のみなので 滞在する読谷村を堪能してきます。
ショージさんのレポートにあった読谷山花織の関連施設や 
やちむんの里など再訪して じっくり沖縄の工芸に触れてきたいと
思います。

これからも 伝統産業を巡るレポート楽しみにしています。
[ 2011/04/08 10:24 ] [ 編集 ]
Re: タイトルなし
宮古島の滞在期間は短かったためさわりしか紹介できませんが、もうあと何回か宮古上布の記事を書けると思います。近々また更新しますね。

沖縄への旅行、楽しんでください^^
工芸を楽しむポイントは、やっぱり現場に行くことだと思います。見て聞いて触れると今までの見方ががらりと変わってきますので。
[ 2011/04/10 12:34 ] [ 編集 ]
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プロフィール

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Author:shoji
名古屋の学生です。
今年度は日本の伝統産業を巡る旅に出てます。
旅先で見たこと体験したことを日々綴っていきます。

※すでに旅は終了しています。

mail:cus-show at hotmail.co.jp



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